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【事業報告】令和3年度 日独学生青年リーダーオンライン交流事業を終えて

#SDGs #国立夜須高原青少年自然の家 #国際交流・異文化理解

この度、9月7〜14日までの1週間、日独学生青年リーダーオンライン交流事業に参加しました。はじめにこの場をお借りして、コロナ禍でありながら日独学生青年リーダーオンライン交流事業を開催してくださった、ベルリン日独センターの皆様、独立行政法人国立青少年教育振興機構の皆様、貴重なお話を提供してくださったザクセン州青少年連合の皆様に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

○事業の概要
趣旨
 ボランティア活動を行っている日本とドイツの学生の交流を推進することで、高い国際感覚を備えた青少年の育成を図ります。
↓令和3年度 日独学生青年リーダーオンライン交流事業 募集要項より引用https://www.niye.go.jp/files/items/1393/File/2021gakuseiyoukou.pdf

参加対象者
・日本国籍を有し、青少年団体等でリーダーとして継続的にボランティア活動や社会貢献活動を行なっている高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院等の学生。
・2021年4月1日現在、16歳以上26歳以下の人

テーマ:「若者の社会参画」
講義・バーチャル訪問
 ドイツにおける青少年団体活動や青少年援助、社会参画についての講義を聞きます。またドイツの青少年関連団体やボランティア団体を訪れ、紹介動画を視聴した後、質疑応答でより深い学びを受けます。
ディスカッション
 ドイツ団(ドイツ側の参加者)とディスカッションを行い、お互いの国で所属しているボランティア活動、すなわち社会参画について議論を重ねます。またコロナ禍におけるボランティアの取り組み方や、それぞれが抱える問題点を共有し合い、課題に対してどのようにアプローチしていくべきかを話し合います。

○参加しようと思ったきっかけ
プログラムのカリキュラムの中に、「ドイツの方とディスカッションを行う」時間があったからです。高校在学中にスイスのドイツ語圏に1年間留学を経験し、4年が経ちました。帰国後も大学でドイツ語を学んだり、独自でドイツ語検定に挑戦したり、スイス時代のホストファミリーや友人、また所属の留学団体(私が高校留学を経験した団体)で日本に来日していたドイツ語圏の留学生のサポートを行うなど、帰国後もドイツ語に触れる機会を作っていました。しかし世界的猛威を奮っているコロナウイルスの影響で留学生のサポートがストップしたり、大学におけるドイツ語人口が減少するなどの影響で、ドイツ語に触れる機会が減少しました。そんな時に今回参加した「日独学生青年リーダーオンライン交流事業」のお話を頂き、ぜひ参加したいと思い、応募しました。

○現在参加しているボランティア
・国際ロータリー第2700地区青少年交換の学友グループ ROTEX
ロータリー青少年交換事業で1年間の交換留学を終えた学生により構成された組織のことを指します。1年間の青少年交換を成し遂げた私たちはROTEXとして2700地区(福岡地区)に派遣される各国の留学生の生活面・言語面のサポート、また2700地区から留学に派遣予定の高校生に自分たちの留学での経験を伝え、留学に必要となる書類やスキルの育成のサポートをしています。またInstagramを通して広報活動も行なっています。

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・日本の次世代リーダー養成塾
 将来のリーダーを目指す志の高い高校生のためのサマースクールで、今年で18回目を迎えました。日本を超え世界各国で活躍する一流の講師陣の講義を聞きます。また、塾生は20〜25人単位のクラスに所属し、今後の日本や世界がどうあるべきかを高校生の視点から議論を重ね、最後に他の塾生や講師の先生、協賛企業から出向される「たんの先生」と呼ばれる社会人に向けてプレゼンテーションを行います。私自身高校3年生の時に15期生として、昨年今年は学生リーダー(大学生ボランティア)として参加しました。学生リーダーはクラス担当、塾全体の運営に携わる全体統括、ディスカッションの発表の企画運営と担当で分かれており、昨年はクラス担当、今年は全体統括を担当しました。

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○ボランティア参加者しか参加できない?
そのようなことはありません。中には所属していない人もいます。しかし、参加者全員が社会参画やボランティア活動に興味があり、当事者意識の高い人たちが参加しており、ディスカッションも濃く、講義やバーチャル訪問でも積極的に質問や意見が飛び交っていました。
参加者の経験しているボランティアも多種多様で、青少年の家で子どもとキャンプをしている人、子ども食堂に関わっている人、大学でのノートテイカーのボランティアをしている人など、ボランティアで関わっている対象年齢も様々でした。

○9月7日
7日はオリエンテーションで、事業目的やベルリン日独センターの概要の説明がありました。コロナ禍でありながら、試行錯誤して私たちのために開催してくださることに感謝するとともに、1週間のプログラムへの期待と緊張を感じた瞬間でした。

○9月8日
 8日は「青少年援助」と「子どもの社会参画」といったテーマで講義が行われました。
青少年援助
人生を楽しく、そして自由に過ごすために、ドイツでは親の貧富に関わらず全ての若者に国から助成され「青少年援助法」があります。ドイツは連邦制国家であるため、連邦(国)州自治体(市郡)の3つの単位から構成されています。
ここでいう「青少年援助」とは、社会や共同体にとって青少年が有意義で良い成長を遂げることが出来るための任務と給付のことを指し、子供と若者の社会化(良い人間関係を築き社会の一員となる人格形成のプロセス)を支援しているそうです。学校、家庭に次ぐ第3の社会化の場所として青少年援助が行われています。
若者の社会参画としての青少年団体の活動は継続的であり、積極的な自主性が求められています。基本的には参加者が自主的に参画することで社会に参加することが求められますが、場合によっては上の組織が対応する補完性の関係が成り立っています。
旧青少年福祉法の是正として考案された「社会法典第8編」により困窮している子どもや若者が自分の意思で人生決定できる援助が行われています。「社会法典第8編」の最初には以下のことが記されています。尚、青少年は0歳以上27歳未満の人々を指します。
第1貢「全ての青少年は自己の発達を促進する権利及び責任感と社会性を有する人格へと養成される権利を有する。」
この「社会法典第8編」の中で特に重要視されているのは第11条と第12条であり、詳細は以下の通りです。
第11条では、自発性、青少年の世界に合わせた活動で、共同決定、共に考えて作っていく、社会貢献活動を促します。活動内容はさまざまで、一般教育から政治、健康教育、スポーツ、文化などの活動があります。
第12条では、それぞれの定款上の独自性を尊重し、青少年団体や青少年グループの主体的な活動を促進することが公的実施主体の義務とされており、青少年会員が自らを組織します。活動は長期継続を前提で、通常は会員を対象とされていますが、非会員の青少年向けの活動を行う事もあります。
青少年の活動は9割がボランティアにより組織されています。そのためボランティア養成のためのユースリーダーの資格も存在し、Juleica(ユライカ)を保持していたらドイツ全地域でユースリーダーであることを証明します。

子どもの社会参画
「参画」とは個人と組織を決定過程と意思形成過程に参加させることを指すので、「子どもの社会参画」は子供と若者の意見を聞き、彼らが関係する事すべて自分の意見を考慮されます。失敗が許される環境であるため、子どものうちから挑戦できる場となっています。参画において「自治」であり、0〜27歳未満の青少年が干渉されることなく自分たちで組織し決定する形式が理想であることを学びました。

○9月9日
9日には、ボランティア活動団体NDC(Network, Democracy, courage=民主主義と勇気のネットワーク)と子どもと家族の居場所「マライケ」について学びました。
ボランティア活動団体NDC(Network, Democracy, courage=民主主義と勇気のネットワーク)
 活動対象は、児童、障がい者を含めた生徒、学校外グループ、教育関係者、職業訓練性、会社員です。取り組み内容としては人種差別、庇護、ヨーロッパ、性差別、同性愛嫌悪、クィア差別、反ユダヤ主義、陰謀論、階級差別、ネオナチの構造、安全なインターネット、データ保護、チームビルディング、コミュニケーションがテーマとなっています。
 ドイツ全国には600名ものリーダーが存在し、それぞれのテーマに個人的に高い関心を持つ若者で組織されています。活動を通して同世代との出会いを可能にし、新しい視点をもたらし、同じ目線で信頼関係をベースにした取り組みが可能になっているようです。

子どもと家族の居場所「マライケ」
 「マライケ」とはさまざまな問題を抱えている子供を支援している施設のことです。マライケの目指す子ども像は子供や若者が挑戦し、自己決断ができることであることです。貧富、移民、人種と関係なく誰でも受け入れており、移民者にはドイツ社会で生活する上で必要となるドイツ語教育の支援もしています。現在マライケを使用している子どもは近所の子がほとんどですが、学校の休み期間に他の地域から来る子どもたちも受け入れています。

○9月10日・11日
私が楽しみにしていたドイツ団とのディスカッションが開催されました。ディスカッションは10日と11日の2日間に渡り開催されました。10日には「私のボランティア活動」「ボランティアのやりがい・後悔していること」「ボランティアにおける課題」について、11日には「コロナ禍におけるボランティア」「ポスト・コロナのボランティアの活動の必要条件」「大人と若者の間にあるボランティアの違い」についてディスカッションを行いました。2日間のディスカッションを通して、国や活動地域は違いますが、皆が共通した目的を持って活動していることがわかりました。活動しているボランティアにおいての課題を皆に開示したところ、メンバーがそれぞれの活動団体で行った改善案を出したり、励ましてくれました。今回のディスカッションで話し合い、学んだことを所属団体に持ち帰り、課題を少しでも改善できるように精進します。

○9月13日
 講義を聞き、ディスカッションを重ねる中で生まれた疑問をドイツのザクセン州青少年連合の事務局長の方に質問する機会をいただきました。8日からのプログラムを通じて今後私たちが社会参画にどのように関わっていけばいいかを振り返る機会となりました。日本側の参加者からも様々な質問が飛び交い、学びの多い時間となりました。
 その後、U25(ベルリン大司教管区カリタス連盟)による25歳未満オンライン自殺予防相談の講話がありました。ドイツにおける死因は自殺が6割を占めており、2019年ドイツにおける25歳未満の自殺者数は471名、自殺未遂者はその2倍になるとのことです。その策として、U25ではオンラインでの相談を実施しています。無料で相談でき、匿名で守秘義務が守られており、本人特定不可能なオンラインサービスにより相談が受けられるため、ニーズが高いそうです。また相談を受けるピアカウンセラーも同世代の16〜25歳未満でボランティアが担っています。同世代の方ほうがより理解・親近感があり、同じ目線での話し合いができるからです。ピアカウンセラーの養成には4ヶ月計32時間の研修が課され、研修では、オンライン相談、危機介入、自殺の兆候、自身の危機的状況に関する経験の振り返りが行われています。相談者のうち、53%が自殺を考えており、29%が自殺をする可能性が高い人とのことです。
 この講義をきっかけにいかに日本では自殺がタブー化されているかがわかりました。私自身自殺について考えたことはなかったですし、日本参加者の多くもこの講義から考えるきっかけになったようです。日本の若者も死因の多くがドイツと同じく自殺ですが、実際に彼らの声を届けられるようなアプローチがあるかは定かではありません。少しでも自殺する方の割合が減少するような取り組みを日本でも行うことが大切であると感じました。

○9月14日
 ドイツの学校におけるボランティア活動紹介動画を視聴しました。小学生という果敢な時期から自分の意見を表明する機会を通して社会参画できる環境は、ドイツの青少年援助の環境が整っているからこその結果であることがわかりました。
 クロージングとして、私たちが1週間のプログラムを通じて感じたことを共有しました(以下記載)。1週間という短くてあっという間の期間ではありましたが濃密で学びの多い時間を過ごすことができました。ドイツ、そして日本各地にボランティアを通じて社会参画に積極的に関わる同士がいることを忘れずに今後もボランティア活動に励んでいきます。

○参加して感じたこと
プログラム参加当初、「社会参画」と聞くと正直馴染みがあまりなく、参加することに対しての敷居が高いという印象を抱いていました。しかし、ドイツ青少年連合の講義を通して、身近なものという認識に変化しました。日本においてボランティアは異質なものとして捉えられることが多いように感じることがありますが、ドイツでは国をあげて社会参画に繋げる政策が整っており、様々な文化背景を兼ね備えた人々の共存する国ならではと思いました。またディスカッションで各々のボランティアやその問題点を話し合う中で、共通点や相違点を見つけることができました。活動している地域や活動内容が異なっていても、それぞれが積極的にボランティアに関わり、社会や今後の後輩育成に貢献したいといった点において共通していました。
 今後の日本を担っていく存在である私たちにとって「社会参画」は重要なテーマですが、実際若者の声は届かないことの方が大きいような気がします。しかし若者の世論が届かない理由を考えることができたため、今後社会参画に関与していく中で、今の課題に向けてどのようにアプローチをしていくか、考える機会を増やすことが社会参画の一歩に繋がると考えます。
まずは所属団体のメンバーのモチベーションの差といった課題点に立ち向かいます。事業を通して共通した課題を抱えている団員と話し合う機会があり、どのようにアプローチすればいいかの意見交換を行うことができました。しかし、やる気のあるメンバーのみと限定すると参加に対する敷居が高くなることもあります。そのため、やる気の高さに合わせて、それぞれの強みを発揮できるような場を作っていきます。今後もボランティアに積極的にコミットし、社会参画に関わっていきたいです。貴重な機会を与えてくださった全ての方々に感謝いたします。本当にありがとうございました。

今回の執筆者
西南学院大学国際文化学部3年生 藤田百華(ふじたももか)

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